熊本地震で、自分の家に大きな揺れで住めなくなり、自家用車内等で睡眠をとっておられる方が大勢います。しかし、これはエコノミークラスクラス症候群という重大な病気を引き起こすことがあります。
「エコノミークラス症候群」は、長時間の飛行機旅行によって引き起こされた病名のことなのです。エコノミークラスの狭い座席で長時間の飛行機旅行を強いられた結果、発生した症状にこの名前が付けられた由来、みたいです。
飛行機を降りて歩き始めたとたん、急に呼吸困難やショックを起こし、ときには亡くなることもあります。これが「エコノミークラス症候群」の典型的なケースです。
最近テレビや新聞などで、これまで健康だった人が突然死を起こす病気の一つとして時々取り上げられていますので、この病気の名前を聞いたことがある方も多いと思います。
飛行機のエコノミークラスで旅行すると、長時間狭い椅子に座ったままの状態を強いられることが多く、足の血液の流れが悪くなり、静脈の中に血の塊(静脈血栓)ができることがあります。この静脈血栓は歩行などをきっかけに足の血管から離れ、血液の流れに乗って肺に到着し、肺の動脈を閉塞してしまいます。
この病気はエコノミークラスの乗客だけでなく、ビジネスクラス以上の乗客や、車の長距離運転手などにも発症することが知られてきましたので、「旅行者血栓症」とも呼ばれています。
体中に張り巡らされた血管と心臓とで構成されている循環器系は、一時も休まず酸素と栄養を含む血液を体全体に供給する役目を持っています。循環器系に少しでも不調が生じると、たちまち生命に対し危険な状況が発生することがあります。急に命に関わる大きな発作が生じる循環器の病気として欧米では(1)急性心筋梗塞症(2)大動脈瘤/大動脈解離(3)急性肺血栓塞栓症の三大疾患が有名です。
わが国の急性心筋梗塞の発症率は、年間に10万人あたり30~40人とされています。一方、急性肺血栓塞栓症の患者さんの数は、日本ではこれまで非常に少ないと考えられてきました。ところが最近の調査では、急性肺血栓塞栓症と診断された人の数は近年、急に増加しており、発症者数は年間に10万人あたり約3人程度と報告されています。この数は急性心筋梗塞症と比較すると少数ですが、大動脈瘤/大動脈解離と同程度で、決して少ない数字ではありません。最近、これが急性肺血栓塞栓症が注目されてきた理由の一つです。
予防
水分をとる(アルコール・コーヒーは避ける); 1時間ごとに
機内・車内の少し離れたトイレに行く。 座席で3~5分間、足の上下運動をする。 ゆったりした 衣服を着て、ベルトをゆるめる。 血行が悪くなるので足は組まない。